労働問題でお悩みの方へ
労働事件は会社側の立証の負担が重い
労働事件と一言で言っても、解雇の有効性が争われる事案から、給与や退職金、未払残業代の請求、労働災害の補償やセクハラ・パワハラの慰謝料請求など、いろいろあります。
労働関係は、平日の目覚めている時間としては家庭よりも長く過ごし、人生観への影響も大きく、やりがいや喪失感など感情への影響も大きい分野です。人生の中でも大きな意味を持つ関係が、長い人であれば40年以上も継続することから、問題が複雑で多岐にわたることが想像できると思います。そのため、法律も複雑で、多くの判例を理解しながら、現状の権利関係や見通しを把握するのはとても難しい分野とも言えます。
そして、労働事件の特徴としては、ほとんどの場合、現場が会社内で、証拠(例えばタイムカードや、メールの記録、出勤簿や賃金台帳など)が会社が持っていることです。これは一見、労働事件が会社に有利なように思えますが、このような前提によって、事実関係を立証する負担が会社側に課せられることが多いと実感します。また、本来ならば作られているはずの資料が会社側に備えられていなかった場合には、特に会社側に不利に手続が傾くことがしばしばです。
このように、労働者側からみれば、手元の証拠がない場合であっても、まだまだあきらめることなく手続を進めていく余地があると思います。
労働事件に特別な手続がある
労働事件は、上記のように多種多様であることから、一般の民事事件とは異なる手続が用意されています。その代表が、労働審判手続です。労働審判手続の特徴は、労使双方の専門家(経営者団体や労働組合から派遣される)が関与すること、おおむね3回で手続が終了すること、実情に即した柔軟な解決が図られること、審判に不服があれば裁判に移行することなどが挙げられます。特に、3回で手続が終了する点が、早期に解決を望む方にとってはとても使えるポイントです(これは労働者にとっても会社にとっても言えることです)。
一定の手続を3回で詰め込んで行うことから、かなり忙しい進行になります。1回目の段階で主張や立証を完了しておく必要が有ることから、特に、会社側にとっては、立証の負担が重く、訴えられてから準備を始めるため、かなり大変だと思っていただいて良いと思います。このような特徴から、大規模な労働災害の事案など、争われるポイントが多い事案や、逆に請求金額が少なすぎる事案では使いにくいものの、中規模の労働事案であれば、特に労働者側にとって使い勝手の良い制度と言えます。
また、労働事件については、労働局や都道府県の労働委員会のあっせん手続があります。労働局と労働委員会で、手続の長さや関与する関係者の違いはありますが、いずれも安い費用での解決が目指せるのがメリットです。他方、あっせんに応じる義務はないため、空振りすることが考えられますが、給与の支払いなど、請求金額が安い事案であれば、弁護士による相談による助言を受けながらご本人で行ったとしても、十分できる手続といえます。逆に、会社側からみれば、早期に紛争の解決を図るメリットが大きく、一般論としてはあっせんに応じる方向でアドバイスをすることが多いと思います。
労働事件で特に重視される適正手続
労働事件の特徴の1つが、適正手続を重視する傾向が強いことです。例えば、労働者が行った不正行為は懲戒解雇の理由となり、能力不足や職務怠慢は普通解雇の理由となりえますが、解雇に至るまでに、指導や改善の要求を怠っていたり、十分な教育が行き届いていなかったり、弁明の機会を与えなかったり、労働組合との協議が欠けていたりした場合は、そのことが理由で解雇が無効になることが考えられます。
このことは特に会社側が日常的に法律相談を行う必要があることを示しています。実際、顧問会社からの相談の多くが労働関係で、指導や教育体制の整備や弁明の聞き方、これらの証拠化の方法は、アドバイスする機会が多い内容です。
強い自信を持っている経営者の会社ほど、労働関係の問題に対応する際の手続の適正さへの配慮が失われている場合が多く、傷口を大きくする危険を感じることがあります。
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