交通事故に遭われた方へ
まずは心身のケアが優先
治療にあたっては「症状固定」が重要
人身事故にあった場合は、まずは治療です。問題は、その治療をいつまで続けるのかです。
これ以上治療を続けて良くならない(完治した場合や症状がなくならなくても症状が軽くならなくなった時点)を「症状固定」と呼んでいます。
症状固定までは、治療費や休業損害、通院交通費などが損害賠償の対象になりますが、症状固定後は、これらの損害は賠償されず、残った症状について後遺障害としての損害があるか否かを判断することになります。症状固定は、医師が患者である交通事故被害者を診断しながら一応の判断をしますが、最終的には法律的にその時期が判断されるので、注意が必要です。症状固定後は、後遺障害の有無を検討します(一般的には、自賠責保険の事前認定制度を利用します)。
このように、損害の前提となる治療期間(症状固定までの期間)や後遺障害の有無や程度を明らかにし、被害者側の過失の有無やその程度を検討するなどしながら、損害額を算定します。損害額によって、交渉による解決が良いのか、民事訴訟を行うのかを依頼者のご意向を重視しながら決めていきます。
交通事故の賠償金は弁護士に依頼することで必ず上がる?
損害保険会社から提示される損害賠償額よりも、民事訴訟をして認定される損害賠償額のほうが大きいとよく言われています。一般論としては、正しいと思います。
その理由の1つは、損害保険会社が適用する内部基準よりも、裁判所が適用する基準(よく用いられるのは「赤い本」や「青い本」と呼ばれる公刊されている損害賠償額算定基準です)の方が、高く金額が出るからです。
2つ目の理由は、民事訴訟を行った場合、損害として、損害額合計の1割にあたる弁護士費用の請求が認められることが一般的であることに加え、事故発生日から法律で定められた遅延損害金(いわば利息)がほぼ自動的に認められる一方で、損害保険会社の示談の場合はこれらを考慮しない場合がほとんどだからです。
ただし、民事訴訟の方が逆に金額が少なくなる場合が2つ考えられます。
まず、被害者側にもある程度過失がある場合です。自賠責保険による賠償の場合は、金額が低い代わりに被害者の過失を考慮しない、あるいは少なく考慮する実務になっており、過失をそのまま考慮する民事裁判のほうが結果的に金額が低くなることが考えられます。
次に、事故から症状固定までの治療期間が長期になった一方で、民事裁判では症状固定までの時期を短く判断されてしまう場合です(前記の通り、症状固定時期は一次的には医師によって判断されますが、最終的には法律的に判断されます)。この場合、症状固定後の治療費が被害者負担となり、損害賠償として受け取れる金額が目減りすることが考えられます。
このように、弁護士に依頼すれば必ず上がるという説明は言いすぎであり、被害者側の過失や治療の経過をみて、個別にていねいに判断する必要があります。
そのほか、強い後遺障害が残った場合を中心に、さまざまな費用(例えば将来介護費や特殊な装具費、自宅や自動車の改造費用など)が認められる可能性があり、これらの項目を見逃さないことも重要です。
刑事事件の動きを視野に入れる
人身被害が出る交通事故の場合、自動車運転処罰法違反などの刑事事件の問題も残ります。
人身事故か物損事故かは、この点で大きな違いがあり(物損事故は犯罪ではなく、捜査にはならない)、民事訴訟との関係では、捜査記録が残るか否かの違いが出ます(人身の場合、立会を行った実況見分調書や取調べ結果を残す供述調書が取得できる可能性がありますが、物損事故の場合は事故処理を行った報告に過ぎない物件事故報告書が残るのみです)。
人身被害がある場合は、的確に被害申告を警察に行うことが重要です。また、被害者が亡くなられたり、重大な傷害を負われた場合は、加害者が起訴されて公判になることが考えられます。被害者にとっては、刑事手続の進行のイメージが沸かず、精神的に相当負担になることが考えられます。被害者は、公判に被害者参加し、意見を述べたり、加害者(被告人)に質問したりできますが、検察官との調整が必要であり、弁護士の助力なしでは相当難しい作業であろうと思われます。
他方、加害者側から考えると、刑事事件への対応は、場合によっては刑務所に収監されることも考えられるので、弁護人から的確な支援を得ることは重要です。
このように、人身事故の場合は、刑事事件の動きも考える必要があり、手続が進行してしまうと手遅れになることが考えられるので、できれば早期に弁護士に相談しておくことが重要です。
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